Rhythm Rhythm Rhythm 概要

リズムって何だろう? Rhythm Circusでその問いに向きあう機会を作りたい。参加する方ひとりひとりに何か残せるような場を目指し、 2010 年夏【リズムを取り戻す作戦会議 Rhythm Rhythm Rhythm】と題し、トークイベントを企画した。

今回のゲストはミュージシャン、港大尋氏。「リズムという抵抗」というテーマを掲げた彼は、音楽としてのリズムより更に広義な「リズム」を捉えている。哲学、文化人類学、身体学…ーさまざまな分野から挙げられた引用文や動画を元に、参加者にリズムについて考える「きっかけ」を投げかけた。

最終日には仲野麻紀さんをスペシャルゲストにお招きし、あえて国境を越えた楽器で、民族や地方を香らせる選曲でライヴがおこなわれた。

参加者は回を重ねるにつれ増え、多岐にわたる職業や立ち位置を持った方が訪れた。ひとつひとつのトピックに対して返される意見にはそれぞれの経験や思考が滲み出ており、思いもよらない発見や話題を交流する機会になった。

Rhythm Rhythm Rhythmの中で出された問いに、答えは出ていない。リズムについて考えたこと、出した答えはそれぞれ異なるだろう。Rhythm Rhythm Rhythmはあくまで作戦会議であって、作戦を実行するのはその場にいたわたしたち自身なのだ。

第I期 港大尋「リズムという抵抗」

第1回「リズムとは何か」 8 月15 日(日)14:00-
第2回「声・ことば・人間」 8 月21 日(土)14:00-
第3回「抵抗の論理」
    特別ゲスト:仲野麻紀〈sax〉
8 月28 日(土) 14:00-
会場世田谷ものづくり学校 1F プレゼンテーションルーム
主催 Rhythm Circus(リズムサーカス)
企画・制作角谷七瀬、吉田みさと(Rhythm Circus Crew)
共催世田谷ものづくり学校
助成武藤舞音楽環境創造教育研究助成金

3 日間の流れ

第 1 回  8 月 15 日 リズムとは何か

■「はじまりのリズム」を考える

生物学的なリズムのはじまり

「胎児の世界」「幼年期の認識論」

(例 いないいないばあ)

考古学的なリズムのはじまり

「ヒトはどのようにしてヒトとなったか」「はじまりの言葉」

(例 縄文土器 縄文の布 アフリカ・ 7 万 5 千年前の最古の模様)

■リズムの広がり

―聴覚だけが、リズムを感じるわけではない―

視覚、触覚など、五感にわたるリズム 

「言い伝え」とは何か 詩や物語の方へ

■リズム=コール&レスポンスの無数の連なり?

「歴史は円環であり、あらゆることはすでに起こったことであり、未来においても起こりうる」

―― J.L. ボルヘス「神学者」

「音楽は水たまりのようなものだよ。いつの間にか蒸発してなくなるけど、
また雨が降って、水たまりができる。そんなものだよ。」 

―― D. チェリー(インタビュー記事)

※右上画像…最古の模様「最も古いリズムと言えるのではないか」

※右下動画…ディジュリドゥの生演奏「呼吸の音も含めて感じる身体感は、脈々と受け継がれるリズムでは?」

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第 2 回  8 月 21 日 声・ことば・人間

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「門付け」をめぐって

瞽女とは、三味線を携え農村・山村を巡る盲目の女性遊行芸人である。ゴゼサン・ゴゼサなどと呼ばれた。「一年のほとんどが旅で明け暮れ、目的の村に着くと〈瞽女宿〉という泊まりつけの家に荷をおろしては、家々を門付けし、夜になれば、村人が集まり瞽女の本領である段物や口説、民謡などをきかせ、喜捨の米や祝儀が収入となった。」

「新潟県県民百科事典」

新潟県内では、高田瞽女・長岡瞽女が 2 大組織だが、柏崎近辺では刈羽瞽女とよばれる集団が存在した。」

「三味線をこわきにかかえ、門づけ歌や段物・くどき・はやり歌などを歌い歩いた盲目の遊行芸人″瞽女(ごぜ)″の組織は、昔は関東・北陸から九州にいたる広い地域にわたって随所に見られたというが、越後に本拠におく瞽女集団が最も発達し、かつ近年まで存続してきたということは注目すべき現象であり、雪国という風土や社会環境のしからしむるころが大きいと思われる。……」

鈴木昭英著「刈羽瞽女」(長岡市立科学博物館研究報告?.8 昭48)より
右動画…小泉八雲の書き記した「瞽女唄」

―ハーンが瞽女の声色に聴き取ったものとは何だったか?―

―単なるオリエンタリズムではない、記憶以前のリズム?―


F.ニーチェ『悲劇の誕生』より

「ところで民謡というものは、完全にアポロ的な叙事詩に対して、その本質は何であろうか? それはアポロ的なものとディオニュソス的なものの結びつきの永遠の痕跡ではなくて何であろうか?」

「だからメロディこそ最初の、そして普遍的なものなのだ」

「民謡の歌詞では、言葉の方が音楽を模倣しようとして、ひどく緊張している――。」

「詩と音楽、言葉と音との間に考えられる唯一の関係は上に述べた音楽優先ということに尽きる。」

「すなわち、言葉や比喩や概念の方が、音楽に似合った表現を探し求めているのであって、それが見つかった場合には、音楽の威力を全面に受けるということだ。」

「音楽は、事物以前の普遍」

「概念は、事物以降の普遍」

「現実は、事物の中の普遍」


アポロ神/ディオニュソス神の対立とは

静的/動的

天界/大地or下界

荘厳/騒々しい舞踏音楽

冷静な自己抑制/狂気・陶酔

ニーチェは「リズム」に関して言及はしていないが、上記「メロディ」や「音楽」はそのまま「リズム」としても置き換え可能

―リズムとは言葉以前の現象?―

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第 3 回  8 月 28 日 抵抗の論理

ネグリチュードからリズム感/リズム観を考える

「…こうしてリズムはわれわれのうちにあって最も非知性的な部分に作用を及ぼす。専制的な作用を及ぼす。そして客体の精神性のうちにわれわれを入りこませる。われわれ特有のあの自己放棄の態度はまさにリズム的なものなのである」

(フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』(みすず書房、 1970 年/みすずライブラリー、 1998 年 より)

自己放棄の態度≒前回の小泉八雲「死なない死者」≒ニーチェのディオニュソス的旋律論?

一方で、現代は、過剰な自己責任論の時代? リズムとはそのような時代を乗り越えるための契機になりうるか?

あるいは、若者が抱えるリアリティの不在を解消するような手だてに?

支配的なグローバリゼーションに抗すること

言葉は生きているか、それとも死んでいるか トニ・モリスンのノーベル賞受賞演説をめぐって

盲目のおばあさんの前で、手の中にいる小鳥は生きているか、それとも死んでいるか、と子どもたちが意地悪を言った、という民話

お話を直接語ること、声を伝えるということ

伝播というリズム

【引用されたテキストの作者】

レオポール・セダール・サンゴール

トニ・モリスン

―リズムって何?―

その問に対する答えはそれぞれ違う。


―抵抗―

その言葉の対象も、立場によって異なる。


ひとつの定義や答えに執着しない場の中で、それぞれが得たものは何だったのだろう。

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―印象に残った場面、言葉はなんでしょうか?



28 日の【言葉】と【歌】についての議論が印象に残っています。瞽女さんが身体的に受け継いでいる【語り】における文字と音の関係は現在の歌と全く違う、という点に新鮮味を感じました。記号としての文字、言葉は歌という形にのってもやはり記号として機能するものだと思っていました。一方で歌うという行為はとても身体的で、記号では分類できない感情や時間、関係性を表現する場合があることを感じていました。瞽女唄には後者のような「何か」があるような気がします。

(吉田みさと/リズムサーカス)

「小さい子は足踏みできる」と誰かが言った。そして思い出したのが、おんぶされた幼児のころの自分が、親の背中越しに自分の体がキャッチした親の歩みのリズム。これにまた、講師港大尋さんが関心を示してくださった。ラストに三万年前の「人類最古の模様」や縄文土器にリズムの認識が読み取れると大尋さんに紹介されたのは、目からうろこだった。その後、波も空の雲も宇宙の星もリズムと指摘した若き人の発言には目が点になった。

(中山美由紀/小学校司書)

作家の方が話されたリズム観が強く印象に残っている。「リズムって何かなと突き詰めて考えてみたら、絶句するとき。悲しいとき、喜ぶとき、言葉にならなくて、グッと絶句して、絶句した後また息継ぎする。この瞬間の連続が僕の中の文学であり、リズムになるのかな。」またその後に出てきた「衝動」「ズレ」「違和」などのキーワードも、自分たちがものづくりをする動機、生活をまわしつづける動機につながっていると気づき、ハッとした。

(角谷七瀬/リズムサーカス)

様々な媒体のリズムの起源を資料で見て、出現までの翻訳について語っているところが印象的。 感覚の元に意識を働かせていくと、僕ら自身も自分を翻訳して相手に伝えているのに気づく。 リズムというテーマはあるけどそれ以上に深い会話。 テーマのおかげか各々が質の高い頑固者。 頑固は正直と同義。正直は少数派。 故に言葉で会話という難しさを感じる。 でも頑固が集まると主義になる。 リズムを考えることで質の高いセッションが生まれる。

(竹谷嘉人/画家)

情報が多すぎる中で、意識していないある種のノイズのようなものが、見方を変えると、すごくクリアに入ってくるということ。 しかしその情報量の過剰さが、リアリティの無さやリズムが失われている一因になっているのではないだろうか。 という言葉が、現在自分がもっとも感じて、考えていることとすごく共鳴していて、印象深かった。 震災という未曾有の状況にある時こそ、自分たちのリズムを取り戻し、前をむいて生きていかなければならないと考えさせられる言葉だと思う。

(山本高久/リズムサーカス)

―Rhythm Rhythm Rhythm についてどのように感じましたか?



「リズムという抵抗」というテーマは素敵な出だしだった。 僕はUSTREAMの撮影を依頼をうけ、ぼんやりリズムとはなにかを考えながら参加した。リズムが何に対して抵抗するのかそもそもリズムとは自然の中に流れるものでそれが一体何に、干渉しているのだろうと興味を持った。 配られた資料は小泉八雲や東北のゴゼさんにまつわる話。民俗学とも哲学とも絡めて話が難解な方程式展開する様は聞いていてもとても心地いいものであった。あの会がなにであったか? といえば、「リズムという抵抗」を思考する種をあの場で植え付けられたということ。その種がいつか自分の中でリズムが抵抗するとききっとなにかになるだろうと漠然とした考えを持っている。

(大口遼/なないろチャンネル)

いろんな分野からひとつのテーマについてディスカッションできたのが面白かった。 港さんのリズム観が独特で面白かったのと、来場者も自分の専門や経験に引きつけながらリズム観について語っていたので、話に引きつけられた。 一方で、幅広さを保ちながら、話を収束させるのは難しい。 3 回のディスカッションで得た結論はなんだったのか、まだいまいち分からない。 すぐ分からなくてもいいし、考え続けることが大事なのだとは思うけれど。

(石幡愛/なないろチャンネル)

全 3 回に参加して、港さんや参加者、スタッフの皆さんの様々な視点から話を聞く事で、普段の高校生活では得られないような貴重な経験が出来ました。消化不良のまま終わったトピックも多くあったのですが、今後進学して学んでいく際の大きなヒントになりました。リズムについてひたすら何時間も論じる Rhythm Rhythm Rhythm は数ヶ月たった今、思い返してみても面白い企画だったなぁと思います。次の機会があれば、また参加したいです!

(小川史奈/高校生)

第 2 回目のお話は「リズム」と「記憶」にまつわるところからスタート。 思っていたよりも、「リズム」というキーワードが人類の生命ともっと深いところでつながっていると考えることが可能なんあだなあと気付かされました。 だからこそ、話題がどこまでも広がってしまう可能性があるので、何かにしぼって話す必要はあると思いました。

(神野知恵/リズムサーカス)

音楽を専門とする人、学生さんはもちろん、そうじゃない私のような人もいて、話したいと思った時に無理なく発言できて、あまり気負わず、ふにゃーといられたのは心地よかった。講師港大尋さんのゆるやかな導き、でもさらりと核心にせまっていくスマートさ。身体的、言語的、歴史的、美術的、はては宇宙へと飛んでいったリズムについての、ごった煮なべか。いや、サフランの色がきれいなブイヤベースぐらいにしようか。美味しかった。

(中山美由紀/小学校司書)

―そのほか意見、ご感想などありましたら教えてください!



考えてみたらリズムサーカスが主催しているイベントのほとんどに参加しているような気がする。毎回期待しているし自分がお客としてじゃなくてリズムサーカスとして一体になれる感じはとても心地よい。 これからもなにかあれば是非行きたいし、お互いががっつり絡み合える機会をつくっていきたいなぁと思う。

(大口遼/なないろチャンネル)

「リズムとは何か?」という切り口(問いの立て方)は面白かった。 でも、港さんや Rhythm Circus メンバーなりのリズム観が、既にわりとハッキリしていたので、それを最初から前面に出して、別の問いを立ててもよかったかもしれない。 例えば、「リズムを○○と捉えることによって、世界の見方がどう変わるか」、「リズムを○○と捉えることによって、どのような新しい(学際的)領域が拓けるか」など。

(石幡愛/なないろチャンネル)

その後、一部の参加者と個人的な「プチリズムリズムリズム」を開きましたが、これは有効でした。 音楽に限らず様々な社会現象や現代文化について、リズムを切り口にして語ると違うものが見えてくることがある。夢中でたくさん話しました。 今後もそういったディスカッションが続けられるといいなと思っています。

(神野知恵/リズムサーカス)

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―おわりに―

現代の身の回りの環境にあるさまざまな事柄について、「リズム」という切り口で語り合ってみよう、という動機から始まったこの企画。 しかし第 I 期の今回は、逆に「リズム」という漠然とした概念について、さまざまな切り口から語り合ってみる会になった。 高校生、大学生(音楽、美術、映像、教育、医学 etc )、小学校司書、教諭、写真家、作家、研究者、音楽家、照明家、ダンサー、彫刻家、画家…参加してくださった方々のバックグラウンドはここには書ききれないほど多種多様で、港さんが提示するヒントに対してそれぞれ独自の解釈をし、言葉を交わしていった。

リズムとは何か、抵抗とはどういうことか、結論は出していない。

ただ、この場を共有したことをきっかけに、「リズム」という価値基準を持ってみてほしい、思考の切り口として時々「リズム」を意識してみてほしい、というのが港さんとリズムサーカスからの願いだ。 現代社会への抵抗などと言われると、正直腰が引けるし途方に暮れてしまうが、今回のリズムディスカッションでのみなさんの発言から、周りを見るとき・解釈してみるときのヒントをいくつも得られた気がする。

Rhythm Rhythm Rhythm は、これからも続けていくつもりだ。

次回はぐぐっと焦点を絞って、キューバのバタドラム(打楽器)をヒントに、音楽やダンスのリズム、セッションの場でのコミュニケーションを体感する予定。 また、上のコメントで神野知恵が書いている「プチリズムリズムリズム」のような場も継続的に開いていきたい。

改めて、今回参加してくださった方々、誠にありがとうございました。

これからもどうぞよろしくおねがいいたします。

(角谷七瀬/リズムサーカス)

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