橋田ペッカー正人「リズムを活かして生きる」

第1回目となる今回は、RhythmCircusにもご出演頂くアーティスト ペッカー氏に、 活動についてや「リズム」についてのお考えをインタビューしました。

2010年3月28日開催のRhythm Circus Vol. 01のオープニングアクトとして、ドラムサークルをファシリテート(進行、促進)してくださるペッカーさん。
ミュージシャンとしての活動や教則本の執筆活動を手がける一方で、ドラムサークルによるメンタルヘルスケアにも力を注いでいます。
今回は心を解き放つドラムサークルの魅力についてうかがいました。

インタビューアー 吉田みさと (2010/03/08掲載)


【コミュニケーションのツールとしてのドラムサークル】

はじめに、ドラムサークルとはどういう活動なのか教えてください。

ペッカー まず日本では「ドラム」というとドラムセットを連想しますね? 僕たちは『太鼓』という意味で使っていてアフリカのジェンベ、キューバのコンガ、アラビアのドゥンベックなどを指し、ドラムセットとは違う。あくまでもドラムセットはそれらの太鼓を演奏家の都合の良い様にセットした、組み立てたものですね?そして「サークル」という言葉も大学などの部活、愛好会などという意味ではなくて、輪であること。つまり、輪になって座ることで、瞬間的なリズムや音楽をみんなで共有し、共鳴すること。それをドラムサークルと呼ぶんだ。

ドラムサークルの魅力を教えてください。

ペッカー 瞬間的だから、その共有する参加者だけのオリジナルなものが出るんだよ。誰もアレンジされた譜面を持っていないし、いつのまにか一つのテンポになっていって、みんなでそれを共有して楽しいという意識に共鳴するところがドラムサークルの良いところだと思う。

ドラムサークルは、自由な音楽なんですね。

ペッカー 自由なものだし、太鼓の技術が上手か下手かは全く関係ないリズムのイベントであって、言わばコミュニケーションのツールなんだ。だから、太鼓を使うけど音楽ではない。例えるなら、「あなたは歩いているけど、それは目的地に行くための手段であってウォーキングではない」というのと同じだよ。気持ちよくなったりコミュニケーションをとったり、ストレスを修正したりすることのツール(道具)としてドラムサークルがある、ということなんだ。だから、目的は音楽的な成功ではないし、「間違い」というのも一切ない。つまり、自由にやっていいということなんだ。

【打てば響く、言葉よりも伝わる。】

では、最近開催なさっている婚活ドラムサークルなどもその一種なんですか?

ペッカー 婚活ドラムサークルの目的は「打てば響く」人を探すこと。いかに距離があっても音って瞬間的に通じるでしょ?「打てば響く」ことのすごいところはそこなんだ。いくら高学歴でも高収入でも、結婚したあとに気持ちが合わなければそれで終わり。本当にノンバーバル、非言語なコミュニケーションを使って打てば響くパートナーを探す場にしてほしいと思う。

言葉でおこなうコミュニケーションよりもドラムサークルでのコミュニケーションの方が深い部分で通じ合えるということでしょうか?

ぺッカー 普段自分たちが行っている全部のコミュニケーションが100パーセントだとすると、言葉によるコミュニケーションはたったの7パーセントにすぎないんだね。あと93パーセントは非言語のコミュニケーション。たとえば人の話を聞くとき、よく理解していないのにうなずいてもすぐばれちゃう。逆にしっかり理解しているときは、笑顔を返すだけで「この人はわかってくれてるな?」って伝わるでしょ。言葉なら分からない様に嘘も言えるけれど、非言語だと直截的なので真実しか伝わらない。それが本当の深いコミュニケーションなんだと思う。だから僕らは言葉を使わないでコミュニケーションできるドラムサークルを普及させようとしている。実際に自殺者が10年連続3万人を超すような今の世の中では、コミュニケーションが切実に必要とされている。コミュニケーションがとれれば、死のうと思う人が少なくなるはず。だから、コミュニケーションする場を作っていきたい。

【あなたの成功を鼓舞する-Beat of Success-】

では、ペッカーさんが立ち上げたBOS (Beat of Success) (※1)のことを詳しく伺えますか?

ぺッカー BOSは企業のドラムサークルを専門とした組織体。例えば、会社で働いているサラリーマンのお父さんが会社で失敗したりすると、自分はだめだなあなんてストレスを感じ、それがたまって来ると慢性的なストレス症状になる。そのストレスを持って帰って、子どもと奥さんにぶつけてしまう。子どもと奥さんもそのストレスを受けて、子どもは学校に行って先生にぶつけたり友達にぶつけたりしてしまう。だから学校がストレスの発散の場になって、先生がココロが折れてココロの風邪とかもっと落ちると鬱病になってしまう。こんな悪循環を断ち切るために、会社に務めている人のストレスをケアするBOSができたんだ。ただ、そんな社員を抱えている企業にドラムサークルを紹介してもドラム?音楽。音楽は趣味、お遊びとしか受け取らない会社も多い。ドラムサークルに興味をもたないのですね?その壁をとかすために、いろいろな工夫をしています。“あなたの成功を鼓舞する”という意味合いのBeat Of Successという名前も、その工夫のひとつ。不景気な世の中で時間と効率を重視してしまいがちだけど、働いている人たちのメンタルケアが何より大事なわけです。一度ドラムサークルを試して欲しいのです。本当なら、仕事は楽しくなきゃいけないんです。でもねシゴトって楽しくないことが当たり前になってしまっているから、それをBOSで問い直したいんですね。

【世界を刻むリズム】

「リズム」という言葉に対しての思いや考えを話していただけたら嬉しいです。

ぺッカー 「私はリズム感がないんです」って言う人によく会います。私はいつもそういうときに「リズム感が悪かったらあなたはいま生きていないよ」って答えるんです。そのときのリズムとは生活のリズムのこと。朝起きて、歯を磨いて、食事をして、学校へいって…。それが一日のリズムで、7つ集まって一週間のリズム。これが4つ集まって一ヶ月のリズム。これが12個集まって1年のリズム。その中に日本では四季という四つのリズムがあって、美しい。そのリズムの中を生きてきた人は、リズム感がいいんだ。例えばみさとさん(インタビューアー)がここに来たのはリズム感がいいからだし、君の20年間心臓は一回も休まないですばらしいリズムで刻んでいるんだよ。みんなの言う「リズム感が悪い」というのは、サンバやマンボや8ビートのリズムパターンを知らないなどということです。それは表面の知識であって、常識のリズムはみんないいんだね。

生活リズムと音楽の中のリズム、同じように考えたことはありませんでした。

ぺッカー 『時間を区切っている』という意味で同じなんだよ。音楽のリズムは1234…と刻むビートの1と2の間にどれだけ時間をかけるかを刻んでいて、これも時間だね。同じように一日も時間、一年も時間などと繰り返されるそれをリズムと呼ぶんだ。

私はよく月を見上げるんですけれど、月の満ち欠けもリズムを感じます。

ぺッカー 女の人は月で動いている生き物だからね。子どもが生まれるのも月に関係し、潮の満ち引きも月に関係するから。神戸にフルムーンドラムサークルっていって女性だけのドラムサークルがあるんだよ。満月の日にみんなでケーキを焼いてきて、紅茶を飲んで、太鼓を叩いて、男性の前では言えないようなことも並んで打ち明けあう場なんだ。そうやって打ち明けてみると、自分の家庭とも照らし合わせて、自分の嫁や姑が「こういうこと考えてるんだ」ということにも気付く。そうやって家庭のコミュニケーションを修正していくのにもドラムサークルは役立つんだ。…心も洋服を着ているんだよ。学歴であったり、自分の役職であったり…。それを1枚1枚リズムで脱いでいくと、心の中には『インナーチャイルド』という子供がいる。インナーチャイルドが素直になれること、それがリズムの力なんだ。

【RhythmCircusという曲を創ろう】

最後に、リズムサーカスを作っていく上で何かアドバイスやメッセージがあればお願いします。

ペッカー アドバイスっていうのは、何かの目標に向かっている人に対してのアドバイスだよね。君らはリズムサーカスを成功させたいと思っている人たち。私も成功してほしいと思っている仲間の一人。だから、仲間意識を共有したいと思っている。このチームの仲間意識が、みんなに伝わっていけばいいと思っている。リズムサーカスはまだ1拍めを打ってないから、みんなで打ちたいね、と思うよ。そして2拍めがまた別の場所でおこなわれて、それが4拍そろったら1小節になる。そうやって何年かかかって『リズムサーカス』っていう素敵な1曲ができればいいね。


リズムサーカスという楽しくて素敵な、みんなを笑顔にする曲を作るために、がんばっていこうと思えました。流れる時間や出逢う人々とのリズムを大切にしていきたいです。
ペッカーさん、ありがとうございました。


■■注釈■■

※1 BOS(Beat of Success) 組織の中での個々人を音楽、組織理論、心理学という軸からスキルアップすることを目的とした組織体です。ドラムサークルを通じてストレスケアや本当の意味でのコミュニケーションをはかるレクリエーションをおこなっています。
BOS公式サイトURL http://www.bos1.org/

インタビューアー 吉田みさと(よしだ みさと)

平成元年子供の日生誕。北海道出身。東京藝術大学音楽環境創造科在籍。
ヴィジュアル系について研究。 アフリカングルーヴサークル所属。 学生メディアセンターなないろチャンネル広報担当。 タブラとピアノと歌を緩やかに練習。脈絡のない趣味を抱えながら、音と言葉と出逢った人々を愛しつつ、生きています。